昨年の11月に亡くなった「宇江佐真理」を、いま偲ぶのもおかしな話ですが・・・・・

氏のライフワークとも言われている作品「髪結い伊佐次捕り物余話」を読んでいるからです。この作品は、1995オール読物新人賞を受賞し、出世作となった「幻の声」から始まって、亡くなるまで執筆した「擬宝珠のある橋(20163月発売)」で終わっています。

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「幻の声」から「擬宝珠のある橋」まで16巻のシリーズものとなっています。主人公の「髪結い伊佐次とその妻、芸者お文家族」と「北町奉行所同心、不破友之進家族」を中心に物語が展開する、いわゆる「市井もの時代小説」です。

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2008年発売の第6巻目「君を乗せる舟(文春文庫)」までは、勢い込んで読んでいたのですが、なにやら興味が薄れて以降の巻を読むのを止めていました。

それから8年、冬になってアウトドアの機会も少なくなり、読書をする時間が増えてきました。そんな雰囲気の日々、ヒョイと書棚から引っ張り出して読み始めたのがこのシリーズの第7巻目「雨を見たか」でした。以来足りない巻を買い足してしっかりと読み続けているのです。

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1949年に函館で生まれ育って、201511月に亡くなるまで、執筆の場を函館から変えることがありませんでした。

作品は「髪結い伊佐次・・」ほか2つのシリーズものがあり、単作は1999年の第21回吉川英治新人賞を受賞した「深川恋物語」を初め、44作品にもなります。

その他アンソロジー作品が6作、エッセイ集が1つと、どの作品も多くの読者を惹きつけてやまないものがあります。

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ところが、調べてみるとこれほどの作家でありながら、不思議と「文学賞」に縁が薄いことが判ります。

あの「直木賞」には「幻の声」を含め6度も候補に挙がりながら、受賞はありません。

その他オール読物新人賞と吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞が1回ずつ候補に挙がりながら受賞を逃しています。

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「文学賞」と言うものは、作品が秀逸であるかそうでないかの判断よりも、その時の出版業界の力関係や、選考委員の匙加減ひとつで左右されると以前から囁かれています。もちろん小説も芸術のひとつですから、選ぶ人や読む人の感覚で評価も違ってくるのは当然ですが・・・・・

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なににしても、直木賞に6度も候補に挙がりながら受賞ができなかった「宇江佐真理」の不運を、フアンの一人として嘆かずには居れません。

ちなみに氏の作品の文学賞受章は、

    1. 「幻の声」で1995年の75回オール読物新人賞受賞

    2. 「深川恋物語」で1999年の第21回吉川英治文学新人賞受賞

    3. 「余寒の雪」で2001年の第7回中山義秀文学賞受賞

となっています。


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乳がんを患いながら、淡々と執筆をつづけ、自身のライフワークと名付けた「髪結い伊佐次・・・」シリーズを未完に終わらせながらも、彼岸で笑みを漏らしているでしょう「故宇江佐真理氏」をいま想っているのです。


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by karucyu | 2016-12-19 21:01 | Comments(2)